申立から後見開始の審判まで、精神鑑定が不要の場合には1か月程度、通常の場合は2~3か月程度時間がかかります。裁判所の状況によっては申立自体も予約制で申立だけでも時間がかかる場合もあります。
身体障害のみでは、成年後見制度は利用できません。成年後見制度は意思判断能力が不足する場合に利用するものです。
不動産を売却するため、遺産分割協議をするためのように一時的な必要性からに成年後見制度を利用することはよくあります。
しかし成年後見が一度開始されると、家庭裁判所は、その開始の審判の原因が消滅した場合(例えば、本人の意思判断能力が回復した場合)でなければ、その審判を取り消すことはありません。またこうした原因が消滅しなければ、成年後見人は本人が死亡するまでずっと継続します。
なお正当な事由があれば、家庭裁判所の許可によって成年後見人を辞任することはできます。正当な事由とは、例えば病気や怪我、精神障害、高齢、本人からの暴力等です。
そのため、一度成年後見人になったら、成年後見制度を利用する理由となった手続き(不動産の売却等)が終わってもずっと継続することを理解したうえで成年後見人になる必要があります。
遺言書の作成は成年後見人はできません。ただし成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時においては、医師2人以上の立会があれば遺言書を作成することができます。(民法973条)
従前の禁治産制度では、禁治産宣告を受けたことが戸籍に記載されましたが、成年後見制度の改正で、戸籍による公示方法から登記による公示方法に変わりました。そのため現在は成年被後見人になっても、戸籍に載ることはありません。
誰を後見人等に選任するかは、家庭裁判所が動機や利害関係等を確認して決めることであり、子供が自分を候補者として成年後見の申立てをした場合でも、子供が成年後見人に選任されるとは限りません。場合によっては、司法書士や弁護士等の専門家が成年後見人に選任されることもあります。
成年後見制度は、遺産分割協議のためだけに使用する制度ではありません。遺産分割協議等利益相反行為になるようなことが控えている場合でも、利益相反行為になることを避けるため、本来最も成年後見人に適切と思われる候補者ではなく、別の候補者で申立をすることはやめてください。
成年後見人は遺産分割協議だけのために選任されるわけではありません。申立人が最も適切だと思う候補者を挙げることが大切です。
結果利益相反行為になるような場合は、特別代理人を選任すればよいのです。
成年被後見人は、以前は選挙権が制限されていましたが、平成25年6月30日に施行された公職選挙法等の一部を改正する法律により、成年被後見人も選挙権及び被選挙権を有することになりました。
以前は、申立後でも審判前であれば、自由に取り下げることができたのですが、平成25年1月1日施行された家事事件手続法により、後見等開始の申立ては、審判前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げることができなくなりました。
申立人が申立人の意向に沿わない後見人が選任されそうな場合等に申立を取り下げる例があったそうですが、公益性や本人保護の見地から、後見等開始の審判をすべきであるにもかかわらず、申立の取下げにより、成年後見人を選任できずに事件が終了するのは相当ではないため、取下げに制限がかけられました。
成年後見人の選任の申立人は、法律で定められています。内縁の妻は、法律上の申立人に定められていませんので、内縁の妻が申立人として成年後見人選任の申立てはできません。
成年後見人は、被後見人の生活全般に関する法律行為(介護施設との契約、財産の管理等)を行うのが仕事であり、介護や家事等の事実行為が職務ではありません。
成年後見人の報酬額は、報酬付与審判により管轄の家庭裁判所が決定するので、法律によって基準が定められているわけではありません。一般的には月2万円前後が多いと思われますが、管理財産額や事務内容によって報酬がもっと高くなることもあります。
被後見人の居住用不動産を処分するには、家庭裁判所の許可が必要です。ここでいう居住用不動産の範囲は広く解釈されており、被後見人が現に居住している不動産ばかりでなく、将来居住するために買った不動産や、施設入所前に居住していた不動産も含みます。
よってすでに被後見人が施設に入所している場合でも、以前被後見人が住んでいた家を売るためには家庭裁判所の許可が必要です。