認知症等により本人の判断能力が低下し、意思判断能力が不十分な状況になったら、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者等の請求により、家庭裁判所は、任意後見人を監督する任意後見監督人の選任をします。
任意後見契約は、家庭裁判所がこの任意後見監督人を選任したときから効力が生じ、任意後見事務が開始します。
財産管理契約を締結していた場合は、これにより終了します。
任意後見監督人の資格には制限がなく、親族・知人のほか、弁護士、司法書士、社会福祉士等が選任されています。ただし、任意後見人の近親者である配偶者、直系血族、兄弟姉妹は任意後見監督人にすることはできません。
任意後見監督人の欠格事由として、未成年者、家庭裁判所で解任された法定代理人等、破産者、行方不明者等は、任意後見監督人になることができません。
任意後見監督人について本人は推薦することはできますが、裁判所は本人の意見に拘束されることなく、適任者を裁量で選任することができます。この場合、裁判所は、弁護士会、司法書士会、社会福祉士会等の運営団体の名簿の中から任意後見監督人を選任します。
本人(任意後見契約の委任者)の住所地を管轄する家庭裁判所
本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者
※法定後見の場合と異なり、検察官や市町村長は申立権者とはされていません。
※本人以外の申立の場合、本人の同意が必要ですが、本人が意思能力を喪失している場合は、本人の同意は不要です。
□任意後見監督人選任の申立書
□本人の診断書(家庭裁判所が定める様式のもの)
□本人の戸籍謄本
□本人の住民票
□任意後見契約公正証書の写し
□本人の成年後見等に関する登記事項証明書
□本人の財産に関する資料
□任意後見監督人候補者がいる場合、その者の住民票又は戸籍附票
□申立人の戸籍謄本
※管轄の家庭裁判所により若干異なります。
申立手数料 収入印紙800円分
郵便切手(管轄家庭裁判所により異なります)
登記手数料 収入印紙1400円分
※ 本人の精神の状況について鑑定する必要がある場合、鑑定費用が必要になります。
任意後見監督人の業務は、任意後見人の事務を監督し、その事務について家庭裁判所に報告することです。具体的には任意後見人の事務処理の状況、支出の計算、支出の用途等について、任意後見人から定期的に資料の提出と報告を求めチェックし、本人の財産状況の調査をさせることができます。
これらの報告、調査事項の中から、任意後見人の事務処理に適正でないところがあれば、任意後見監督人は、任意後見人の改善のための助言や指導をして処理の是正をさせなければなりません。
任意後見監督人が任意後見人の事務を監督する中で、任意後見人に不正な行為、著しい不行跡、その他任務に適しない事由があるときは、任意後見監督人の請求により、家庭裁判所は任意後見人を解任することができます。
※任意後見人が解任され、本人の判断能力が欠けている場合は、任意後見監督人から法定後見開始の審判の請求をします。
本人は、任意後見監督人に対して、家庭裁判所が決定した報酬額を支払う必要があります。裁判所は、本人の財産状況、監督事務の内容、任意後見人の報酬、その他の事情を考慮して任意後見監督人の報酬を決定し、この金額は任意後見人が管理する本人の財産から支払われます。任意後見監督人の報酬は、月額1~3万円が相場と思われます。