役員借入金は、貸付金額そのもので評価され、相続に伴う相続税は後継者自身が負担するか、あるいは他の財産によって賄う必要がでてきて、事業承継の際のリスクになりえます。このような問題を避けるための対策として役員借入金の資本組入れ(DES)が考えられます。
DESは、会社が役員借入金を返済する代わりに、その借入金の相手に対して、その会社の株式を発行することをいい、金銭債権の評価方法から取引相場のない株式の評価方法に置き換えられることから、役員の財産の評価額の圧縮が期待でき、その結果事業承継しやすくなります。また財務内容が悪い会社にとっては、役員借入金という債務を資本に振り替えることで負債が減少し、収益の向上につながり、財務体質を改善できます。
DESは現物出資の一種に分類されますが、すでに弁済期が到来している金銭債権であって、この金銭債権について定められた募集事項の価額がこの金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えなければ、検査役の価額調査を省略できます。
登記手続上、給付があったことを証する書面として金銭債権について記載された会計帳簿の添付が必要になりますが、具体的には仕訳帳や総勘定元帳が該当します。貸借対照表は会計帳簿の内容を反映した書類ですが、計算書類に該当しますので、会計帳簿ではありません。また会計帳簿中、募集株式引受人と債権者が同一人であることが分かる程度の債権者の記載がある必要があります。
株主割当増資の場合、原則税金はかかりませんし、第三者割当の場合でも株式の発行価格が時価の場合は税金はかかりません。
第三者割当増資で、株式の発行価格が時価ではなく有利発行にあたると認定された場合、課税リスクがあります。
有利発行と認定されると、株式の時価と発行価格の差額について、経済的利益の供与があったとして、個人の場合は贈与税、法人の場合は法人税が課税される可能性があります。
有利発行になるかどうかの判断は税理士に相談したほうがいいでしょう。
非公開会社の第三者割当の場合、会社法204条3項で払込期日(払込期間を定めた場合、払込期間の初日)の前日までに割当通知をしなければならないとされています。そのため1日で増資することは不可能ですが、2日あれば可能ということになります。
なお総数引受契約の場合は、会社法204条の適用が除外されていますので、割当通知が不要なため、1日で増資することが可能です。
ただし、増資の登記が完了するのには、法務局に登記申請してから1週間前後はかかりますのでご注意ください。
取締役会設置会社では、会社法204条2項により割当決議は取締役会で行わなければなりません。そのため登記申請の際は、添付書類として割当決議を行った取締役会議事録が必要です。
取締役会設置会社においては、株主総会は、法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議できます。そのため定款に割当決議を株主総会で行える旨を定めておけば、株主総会でも割当決議を行えます。
設立の登記の添付書類の場合と異なり、出資に係る財産が金銭のみである場合であっても、株式発行割合を証明する必要があるため、この書面の添付を省略することができません(平成19年1月17日民商91号通達)。